英語学習と娯楽の乖離と接近(Unser-Schutz Giancarla/立正大学心理学部・准教授)
研究発表テーマ:大学生は、娯楽的な英語学習教材に関心があるのか
暗記中心の受験勉強によって、多くの大学生が英語学習に対する抵抗感を抱えて大学での学習を開始する。この現状の改善が、大学における英語教育の継続課題の一つである。上記を受け、小説やコミックを含む英語による娯楽的な資料を活用すれば、英語に対する態度が改善され、より積極的に英語学習に勉めるのではという期待の声もしばしば聞こえてくる。ところが、実際に行った調査の結果として、英語学習において娯楽的な資料を活用したいのかと聞いてみると、肯定的に答える学生が意外に少ないことが分かった。
その理由は多岐に渡るが、日本語教育の実践からヒントが得られると考えている。ここ20年、海外における日本のポピュラーカルチャーに対する関心を日本語教育で活かそうとする動きが見られ、関連の研究報告が多く出ている。だが、日本における英語教育と、外国における日本語教育の位置付けが根本的に違う。前者の場合、ほとんどの子どもが英語を義務教育の一環として学び、個人の意思や関心とは関係なく進んでいく。後者の場合、大半の学習者が、自らの意思で複数の選択肢の中から日本語を選び学び始める。全員ではなくても、日本語を選ぶ学生の多くが、元々日本に関心を持っていると予想できる。海外の日本語教育の場合、主たる課題は、興味を持たせることではなく、その興味関心を発揮することである。
これらから、日本における英語教育に欠如している機会は、様々なものに関心を持つこと、その興味関心によって導かれて前進すること、自ら学習の方向性を決定すること、の三つであることが分かる。だが、英語教育に娯楽的なものを使うのが効果的ではない、とは違う。娯楽を提供すれば楽しくなるのではなく、楽しいと感じるから娯楽である。先に来るべきことは、自身の生活において多文化への関心を持つ機会と、せっかく育まれた関心にそって学習の方向性を決める選択肢ではないだろうか。(ジャンカーラ・ウンサーシュッツ=社会言語学)
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